その後、狭いナポリの市街地を縫うように歩くことになる。スパッカナポリと呼ばれている旧市街と新市街を分断する細く長くつづく道に行きつくと、そこを突き抜けてあっという間に辿り着いたところが娘にとってもうひとつの目的地である。
17世紀初頭に建立しているピオ・モンテ・デッラ・ミゼリコルディア教会は、ナポリにおける救済的な立場を確立させて、貧困や病気による孤独に喘ぐ時の民に手を差し延べたいわば慈善事業の草分け組織として独自の活動を開始している。
教会内に掲げられた大作「慈悲の七つのおこない」は、教会と黎明と同じくして生きてきたカラヴァッジオが、同組織からの依頼を受けて描かれたものである。
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオは、華々しく栄えたルネサンスの斜陽とともに出生、天才と謳われながらも決して朗々と生きてきたわけではなく、そのような人生の裏街道を歩きながらも才能の片鱗をその足跡に残してきた。ローマで人を殺めたことにより町を追放されると行脚の途中でナポリに辿り着く。そこでこの教会と巡り会うのである。
カラヴァッジョの真骨頂であろう写実性、一瞬をまるでカメラのシャッターを切ったかのような劇的な描写は、何よりマエストロの作風全体に共通した“光と影”のコントラストの中に忽然と浮かびあがる。
この「慈悲の七つのおこない」のテーマとなる起こりうること、実際に起こっていることへの警鐘、宗教的な含みのあるメッセージとして、まずは当時のナポリに影響をもたらしている。一枚の絵の中に、≪死者の埋葬≫、≪囚人への慰問、食物の供与≫、≪衣服の譲渡≫、≪病への手解き≫、≪巡礼者の歓待≫、≪飲物の施し≫を絶妙のバランスもって配置されており、その驚愕なる一枚は、後にカラヴァジェスキと呼ばれることになるカラヴァッジョを師と仰ぎ思想を継承する若者たちに多大な影響を与えることになる。
決して広くはない教会の祭壇部に神々しくというよりは荘厳に黒光りする一枚を前にすると、とにかく時の経つのを忘れてしまう。カトリック信者とは程遠い自分ながら、はっきりとした聖書のような文字列は浮かばないながらも自戒を促されているような気持ちになるのである。
長い時間それを見上げていた娘もかなりの衝撃、そして刺激を受けたようであり、いままだ会えていないカラヴァッジョの作品を、自分が若いうちにすべてを網羅していきたいとかなり満足した様子が窺えている。
堂満尚樹(音楽ライター)
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公認ガイド中谷剛氏と歩く「アウシュヴィッツ強制収容所内部見学」とアンナさんが語るポーランドの今
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